外壁の各部の名称
それでは、まず外壁各部の名称から見ていきましょう。
目地(めじ)
外壁材と外壁材の継ぎ目、あるいは外壁材と窓枠・サッシなど別の建材との取り合い部分になります。
継ぎ目には防水を目的としてコーキングが充填されていますが、コーキングは外壁材より寿命が短く、外壁塗装を行う際にはほとんどの場合「打ち替え」を行います。
「打ち替え」は既存コーキングをすべて撤去し、新たにコーキングを充填させる工法ですが、既存コーキングの上から新しいコーキングでカバーする「増し打ち」という工法もあります。
外壁塗装の際には「増し打ち」は行われず、「打ち替え」ですべてのコーキングを交換するのが一般的です。
コーキングが劣化すると、ひび割れ・剥がれ・硬化といった症状が表れますが、いずれの症状でも防水性が損なわれており、そのまま放置すると雨漏りの原因となり得ます。
上記のような症状がコーキングに表れた際は、外壁塗装を行い「打ち替え」をするか、劣化部分の「増し打ち」を検討しましょう。
幕板(まくいた)
建物の中で、境界を区切るように使われる板のことで、胴差(どうざし)、あるいは化粧胴差と呼ばれることもあります。
戸建て住宅では、1階と2階の境界を分けるように用いられることが多いです。
外壁の色を仕切るアクセント、もしくは外壁がツートンカラーの場合の仕切りとして用いられ、装飾的な意味合いが強いです。
水切り(みずきり)
壁面と屋根、あるいは壁面と基礎部分のコンクリートとの間に取り付けられた金属板です。
水切りは、取り合い部分の隙間から雨水が内部に入らないよう防水を目的として取り付けられています。
そのため、雨水の影響を受けやすい場所でもあるので、外壁塗装の際には錆止めを入れたりとしっかり雨水対策をしておきたい場所です。
雨戸(あまど)
雨戸は皆様にとっても馴染みがある部材と言えるでしょう。
風・雨・寒気を防ぐ役割があり、シャッタータイプ以外にも引き戸、折り戸と様々なタイプの雨戸があります。
また、防犯のために取り付けられることも多いですね。
強風対策や防犯を目的として作られている部材のため、建物の中でも比較的耐久性、さらに強度が高い部材と言えます。
かと言って、外壁塗装の際に「雨戸はまだまだ丈夫だし、費用を浮かせるために塗り替えなくても良いか」などと考えるのはやめましょう。
雨戸は壁面の中でも大きな割合を占めるので、汚れや色褪せを放置すると、綺麗になった外壁との対比で余計に汚れや色褪せが目立ってしまいます。
外壁塗装の際には、外壁と併せてしっかり塗り替えてもらいましょう。
戸袋(とぶくろ)
戸袋は、雨戸を収納する箱状の部材です。
基本的には雨戸とセットで取り付けられている場合が多いですが、レールの上に雨戸を収納し戸袋がない仕組みになっているものもあります。
雨戸を使用していない普段の状態では、雨戸ではなく戸袋が常に見えている状態になります。
そのため、外壁塗装の際には戸袋もしっかり塗装を行い、美観を回復させましょう。
面格子(めんごうし)
窓の外側に窓ガラスの保護や装飾、そして防犯のために取り付けられた柵状の部材です。
面格子は金属製以外にも木製のものなど素材は様々ですが、素材に適した塗料で塗り替え、防水性を維持したい部材です。
入隅(いりずみ)・出隅(でずみ)
建物の面と面が出会う箇所の中で、角が内側の隅を入隅、角が外側の隅を出隅と呼びます。
形状によっては入隅が存在しない建物もありますが、出隅が存在しない建物というのはありません。
入隅と出隅は外壁の衝撃が集まりやすい箇所でもあり、地震による建物の揺れの影響でひび割れが起こりやすい箇所です。
外壁塗装の際にはひび割れなどがないか入念にチェックし、ひび割れがあればしっかり補修を行った上で塗装をするようにしましょう。
ベランダ・バルコニー
名称が混在されがちなのがベランダとバルコニーです。
ベランダの定義は「建物の外にあって建物から突き出ており、屋根があるもの」、バルコニーの定義は「二階以上の室外にあり、屋根がないもの」です。
判別が難しい箇所ですが、マンションなどでは建物から突き出ていない上、屋根ではなく上階ベランダ(あるいはバルコニー)の上裏(あげうら)が屋根の代わりになっているため、ほとんどがバルコニーという扱いになります。
一方、テラスは一階の平らなスペースを指します。
笠木(かさぎ)
笠木はベランダや堀、パラペットの上へ取り付ける板で、金属製のものが多いです。
雨水による建物躯体の劣化を防ぐ役割がありますが、笠木と笠木の継ぎ目部分は雨水が侵入しやすい部分であり、笠木自体が劣化してしまっている場合も多いです。
外壁塗装の際には笠木もしっかり点検を行い、防水処理を行う必要がある箇所です。
矢切り(やぎり)
矢切りは外壁と屋根の間のスペースを指します。
比較的雨水が当たりにくい部分なので、換気口を付けることが多く、この部分だけ外壁とは色や素材を変えて作られている住宅も多いです。
屋根の各部の名称
続いて、屋根各部の名称を見ていきましょう。
棟(むね)
棟は、屋根材と屋根材の継ぎ目を指します。
雨水の侵入を防ぐために棟をカバーするように取り付けられた部材を「棟板金」、あるいは「棟押え板」「棟包み板」と言います。
この棟も場所によって呼び方が変わり、屋根の頂上にある棟を「大棟」と呼びます。
そして、屋根の四方の角に設置されている棟を「隅棟」、あるいは大棟から見て下っているので「下り棟」と言います。
棟から雨漏りが起こる理由で一番多いのは、棟板金の劣化です。
棟板金自体が劣化して雨水を通してしまったという事例以外にも、板金を屋根に固定するための釘が錆び、板金が浮いたり外れたりしてしまい、隙間から雨水が侵入したという事例もあります。
屋根工事の際は、釘に錆びや浮きがないかなども併せてチェックし、もし不具合があれば補修してあげる必要があります。
破風(はふ)・破風板(はふいた)
破風とは、屋根のケラバ側先端部分を指し、雨水が建物内部へ入り込まないように防いでいる板が破風板になります。
屋根の形状によって、「切り妻破風」「入母屋破風」「唐破風」と呼び名が分けられることもあります。
劣化しやすい箇所なので、近年では耐久性・防水性の高い金属製の破風板が多く使われています。
鼻隠し(はなかくし)
鼻隠しは、破風に対して側面側の先端部分を指します。
正確には破風と鼻隠しは別の扱いですが、鼻隠しもまとめて破風と呼ぶ業者もいます。
破風と同様に、鼻隠しにも雨水が建物内部へ入り込まないように防ぐという役割がありますが、同時に雨樋を取り付けるための下地になるという役割もあります。
鼻隠しが劣化し、錆びたり浮いたりすると、同時に雨樋も外れたりと不具合が起こる可能性があります。
外壁塗装・屋根修理の際には、しっかり補修を行いたい箇所です。
ケラバ
ケラバは、雨樋が付いていない側の屋根の端部分を指します。
ただし、ケラバは部材の名称ではなく、屋根の中で特定の箇所を示す言葉になります。
雨押さえ(あまおさえ)・雨仕舞い(あめじまい)
外壁部分と屋根など、屋根と別の部材同士が取り合っている立ち上がり部分は構造上、建物内部に雨水が侵入しやすくなっています。
そのため、立ち上がり部分に雨水が入り込まないように取り付けられた部材が雨押さえで、「雨仕舞い」と呼ばれたりもします。
庇(ひさし)・霧避け(きりよけ)
玄関や窓といった開口部の上部に取り付けられた小さな屋根を庇と呼びます。
雨や霧が室内へ入り込むのを防ぐ役割がありますが、窓の上の庇のみを霧避けと呼ぶことがあります。
軒天(のきてん)・軒天井(のきてんじょう)
軒天とは、屋根や庇など外壁部分から外側に出ている部分の裏側を指します。
他にも「軒天井」や「軒裏」と呼ばれたりもしますが、すべて同じ箇所のことです。
雨が直接当たらない箇所なので気づきにくいですが、実は湿気が溜まりやすく劣化が起こりやすい箇所です。
外壁塗装では軒天の塗り替えも重要な作業です。
雨樋(あまどい)
屋根に降り注いだ雨水を一箇所にまとめ、地上へと排水するのが雨樋です。
雨樋の中でも、屋根の軒先に取り付けられた水平方向の雨樋を「横樋」、もしくは「軒樋」と呼びます。
また、垂直方向に取りつけられた雨樋は「竪樋」、もしくは「縦樋」と呼びます。
基本的には屋根の軒先に取り付けますが、玄関の上など大きな庇に取り付けられることもあります。
雨樋に破損や詰まりなど不具合が起これば、雨水を適切に排水することができなくなり、大量の雨が地上に直接流れ落ちたり、外壁に雨水が当たるようになったりして、建物の劣化の原因となります。
屋根工事をご検討中の方でなくても、雨樋に不具合を発見したら早めに対処するようにしましょう。
集水機
横樋を流れてきた雨水を竪樋へと流し込む役割を持った箱状のものを集水機と呼びます。
樋支持金物(といしじかなもの)
支持金物とは、配水管などの配管を支える金具のことです。
雨樋の固定にも支持金物は使われており、雨樋を固定するものを樋支持金物と呼びます。
外構の各部の名称
それでは最後に、外壁・屋根以外の建物外構部分の名称を見ていきましょう。
門扉(もんぴ)
門に設置された扉を門扉と呼び、片開きタイプ・両開きタイプがあります。
住まいの顔となる部分のため、デザインも豊富で装飾に凝ったものも多いです。
多くの門扉が金属製、あるいは木製のため、塗装の対象となります。
門袖(もんそで)・門柱(もんちゅう)
門袖・門柱とは、玄関の前に設置する壁のことです。
玄関隠しの他にも、ポスト・表札・インターホンなどを設置したりするのにも利用されます。
門柱は柱状、門袖は壁状と形状の違いはありますが、外構における役目はほとんど同じです。
塀(ほり)・フェンス
隣家や道路などとの境界に設置する区切り壁のことを塀と呼びます。
区画を明確にするという目的以外に、敷地内を見えにくくし、プライベートを確保するといった目的でも設置されます。
堀はコンクリートやレンガなどのブロックで作られたものが多いですが、現場でコンクリートを固めて作られた塀もあります。
また、フェンスは金属製、あるいは木製の棒材を並べて作る仕切りですが、単独で設置されるタイプだけでなく、堀の上に設置するタイプもあります。
アプローチ
戸建て住宅において、門から玄関までの通路をアプローチと呼びます。
平面で作られる場合が多いですが、門から玄関までの高低差がある場合、階段やスロープを設置することもあります。
ポーチ
玄関前の空間をポーチと呼びます。
大雨の際などの浸水対策として、段差が設けられている場合がほとんどです。
建物の各部材の名称を写真付きで解説 まとめ
建物の各部の名称は、普段から外壁塗装・屋根工事など建築・リフォーム関係に関わっていないと馴染みが無いものばかりです。
解説した名称の中にも、知らなかった単語も多かったのではないでしょうか?
しかし、どんな部材が建物のどこに設置されているのかをしっかり理解できていれば、業者との打ち合わせもスムーズになりますし、見積書もより理解しやすくなります。
そして何より、「見積書に〇〇が含まれていない」「見積書に記載されている〇〇が施工されていない」といった悪徳業者の嘘を見抜くことができるでしょう。
一度に覚えようとすると大変ですが、ぜひ業者との打ち合わせ前に一通り目を通しておくようにしましょう。