耐久性の劣化・雨漏り・シロアリの原因となる外壁・屋根の劣化症状
長く大切に住み続けたいのがマイホームですが、住宅に関するトラブルは皆さんが想像する以上に起こりやすいものです。
そして、その原因の多くが外壁や屋根の痛み・劣化によるものだということはあまり知られていません。
さらに、外壁や屋根は知らない内にトラブルが重症化していることが多い箇所でもあります。
そのため、いざトラブルが起こって現地調査を依頼してみたところ、「外壁のヒビ割れや剥がれが原因だった、もっと早く修繕していれば…」というケースは実は非常に多いのです。
それでは、まずは外壁に現れる劣化症状を順に見ていきましょう。
ご自宅の外壁に同じ症状があったとしても、必ずしも今すぐ修繕工事をしなければならない訳ではありませんが、放置は絶対にしてはいけません。
症状ごとの修繕工事を検討すべき緊急性も併せて解説しますので、心当たりがある症状についてはご自身のご都合と照らし合わせて早めに対処するようにしてください。
チョーキング(白亜化現象)
外壁の劣化と聞くと、まずはこの症状を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか?
外壁を指で触れた際に手に白い粉がついてしまうことがありますが、この現象をチョーキング(白亜化現象)と呼びます。
これは、塗料に使用される白色顔料に含まれている酸化チタンが劣化、もしくは塗料の中の合成樹脂が分解され、顔料が粉状になってが表面に浮き出てしまう現象です。
塗膜は紫外線によって劣化が進むため、チョーキング自体は珍しい現象ではなく、長年外壁塗装を行なっていない建物ではよく見られるものです。
悪質な塗装業者は、「チョーキングが起こってますね!このままだと大きな被害が出るので今すぐ塗り替えが必要です!」などと不安を煽ってきますが、チョーキングが起こってるからといって今すぐ大きな被害が発生するとは考えられません。
ですので、そのような嘘をつくような業者とは契約を結ばないように注意してください。
とは言え、チョーキングが起こっているということは、塗膜の劣化が進んで防水性が低下していることの証でもあります。
今すぐでなくても、できるだけ早めの塗り替えを検討するようにしましょう。
コーキング(シーリング)の劣化・風化・ヒビ割れ
コーキング(シーリング)は、外壁のサイディングの繋ぎ目を埋めるために使われたり、窓やサッシ周りなど外壁と別の建材がとり合う箇所に多く使われている素材です。
コーキングを使う理由としては、気密性や防水性を保つためです。
しかし、コーキングは紫外線に弱いという性質上塗膜より耐用年数が短く、塗膜が寿命を迎えるより先に寿命を迎えてしまいます。
コーキングの劣化・風化が進むとコーキング自体が硬化し、写真のようにヒビ割れが発生したり、外壁材に隙間ができてしまったりするのです。
こうなってしまうと、雨水が建物内部へ侵入するのを許してしまうため、早急な修繕が必要となります。
外壁塗装を行う時は、コーキングは建物丸ごと新しいものへと打ち替えるのが一般的です。
そのため、外壁塗装を検討されているのであれば基本的には気にしなくても大丈夫ですが、部分的に劣化がひどいといった場合には、既存のコーキングの上から新しいコーキングを充填する「コーキング増し打ち」という工法もあるので、施工業者に相談してみましょう。
外壁のヒビ割れ(クラック)
外壁のヒビ割れはクラックとも呼ばれ、塗膜表面のみが劣化して起こる場合もあれば、外壁材自体が乾燥や地震の揺れなどによってヒビ割れてしまう場合もあります。
ヒビ割れはその長さや幅、深さによって修繕の緊急性が変わってくるので順に見ていきましょう。
写真のように、ヒビ割れの幅が細く髪の毛のように見えるものを「ヘアークラック」と呼び、具体的には幅が0.3mm以下のものを指します。
これはまだ表面の塗膜のみが劣化している状態であり、緊急性はそこまで高くありません。
しかし、こういった細いヒビ割れでもそこから徐々にヒビ割れが大きくなってしまうので、時期を見て塗り替えを検討するようにしましょう。
ヒビ割れの幅が0.3mmより大きく1〜2mm程度のものは、幅も重要ですがヒビ割れの「深さ」にも注意が必要です。
もし深さが5mm以上ある場合は、「構造クラック」の可能性が高くなります。
「構造クラック」とは建物の安全性にまで影響を及ぼす恐れのあるクラックを指し、もし放置すると建物基礎の耐久性が低下してしまいます。
さらに、ヒビ割れが建物基礎まで及んでいる場合は雨漏りの原因となる他、シロアリが侵入しやすくなってしまうのでシロアリ被害の温床ともなります。
もしこのサイズのヒビ割れを発見したら、今すぐ塗り替えをした方がいいのか、まずはヒビ割れ自体を補修した方がいいのか、専門家の診断を仰ぐようにしましょう。
ヒビ割れの幅が3mm以上の場合、上述の「構造クラック」が深刻な状態にまで達していると疑って良いでしょう。
建物内部、基礎部分にまで何かしら被害が出ている可能性が高いので、ヒビ割れだけを埋めても根本的な解決にはならない場合が多いです。
専門家の診断はもちろん、修繕の必要がある緊急性の高い状態と言えます。
外壁の浮き・剥がれ
外壁に浮きや剥がれがある場合、壁内部でトラブルが発生している恐れがあります。
この症状は塗膜の劣化が原因という場合だけでなく、施工不良が原因で起こることもあります。
塗装工事に入る前の高圧洗浄やケレン作業を疎かにし、外壁に汚れやゴミ、サビなど不純物が残ったまま塗装をしてしまうと、その箇所は外壁と塗膜の間に空間ができてしまいます。
その隙間の空気が寒暖差などによって膨張し、塗膜を内側から押し出すため塗膜が浮いたり剥がれたりする訳です。
外壁の浮き・剥がれは美観を大きく損ねるだけでなく、外壁が紫外線や雨水に対して無防備な状態になってしまいます。
今日明日で何か起こることは無いにせよ、早めの塗り替えが必要となる症状です。
外壁のコケ・カビ
「雨が降れば外壁にコケやカビが生えるのは別に普通のことじゃないの?」と思われるかもしれません。
しかし、基本的に塗料にはコケやカビ、藻の発生を抑える成分が含まれています。
にも関わらずコケやカビが生えるということは、塗料の防汚染機能が低下している恐れがあります。
また、コケやカビは常時水分があるところに生えるものなので、外壁にコケやカビが生えている=外壁が常時水分を含んでいる=塗膜の防水性が低下している、と考えられるのです。
いずれにせよ、塗膜の劣化が疑われるので、専門家の診断を仰いだ方が良いでしょう。
外壁の色褪せ
外壁は四六時中雨や紫外線などの自然環境に晒されているため、どんな高性能で高価な塗料を使用してもいつかは必ず色褪せが発生します。
実際、色褪せしているからといって今すぐ何かが起こる訳ではありません。
しかし、外壁の色褪せは塗膜劣化の初期症状でもあるため、それまでに一度も外壁診断を行なっていない場合は、一度専門家の診断を受けてみるのも良いでしょう。
実際に被害が発生しないと建物のトラブルには気付きにくいものですが、いざ診断をしてみると予期していなかった不具合の予兆が見つかったりするものです。
金属部分の錆び
建物内の金属部分、例えばベランダ手摺りや屋外階段などは素材が金属である以上錆びが付きものです。
錆びの発生は美観を大きく損なうのはもちろん、進行すると穴や凹みの発生にも繋がってしまうので放置は危険です。
また、錆びているからといってDIYでそのまま錆びの上から塗装を行なっても、塗膜の下で錆びは進行を続けてしまいます。
しっかりした塗装業者であれば、下処理として写真のような「ケレン」という作業を行い、しっかりと錆びを除去してから塗装しています。
上記の例を含む屋根の劣化
上記でご紹介した劣化症状は外壁に限ったことではなく、屋根にも起こりえる症状です。
屋根は普段じっくりと目にする機会が少ない箇所ですが、外壁より屋根の方が紫外線や雨による影響で劣化が進行しやすいものです。
そのため、建材の浮き・剥がれ、色褪せ、錆び、コケ・カビの発生などはもちろん屋根にも発生します。
修繕の内容によって、塗装業者に任せることになるのか、屋根修理業者に任せるのかが違ってきます。
丁寧に下処理を行い、塗装だけで修繕できるケースもあれば、屋根の建材や屋根内部まで被害が及んでいる場合は屋根の専門家である屋根修理業者に工事をお願いしないといけないケースも出てくるでしょう。
どちらに工事を任せるにせよ、気になる劣化に気づいたら早めに診断を受けるようにしましょう。
放置された外壁の劣化がもたらす住まいのトラブル・被害
前項では、外壁・屋根に関して放置すべきではない劣化症状をご紹介しました。
繰り返しになりますが、本来であれば前項いずれかの症状に気づいた時点で早めに住まいの点検・診断を仰ぐべきです。
しかし、もし点検・診断をすることなく、さらに劣化が長期間放置してしまったら…?
ここでは、外壁・屋根の劣化を放置してしまった場合、起こる可能性の高い住まいのトラブル・被害をご紹介します。
雨漏りの発生リスクが高まる
どんな建物であっても、建築上で最も気が配られているのが「雨水」に対してです。
上記でご紹介したヘアークラック(0.3mm以下の細いヒビ割れ)でも雨水は建物内部へ侵入してきますが、実は外壁や屋根はこのような水の性質を把握した上で造られているので、すぐには雨漏りが起きたりはしません。
もし水が侵入してきた場合でも、建物表面の建材の次には防水層が設けられているので、やはり少々の水では屋内まで浸水することはありません。
このように建材で何重にも雨水に対して備えているのですが、その最前線で雨水から建物を守っているのが外壁・屋根に塗装によって作られた塗膜なのです。
まずは塗膜で雨水から建物を守り、そこがダメなら外壁・屋根表面、そしてそこもダメなら外壁・屋根内部の防水層という訳ですね。
ところが、外壁や屋根の塗膜が劣化し防水性が低下してしまうと、上記のようにすぐに雨漏りが発生したりはしませんが、守ってくれる塗膜が無くなった外壁材・屋根材は雨水によってより大きなダメージを受けて劣化が進んでしまいます。
劣化が進んでしまった建材はいずれ雨水によって腐食が進み、さらに建物内部へと被害が進むでしょう。
そして、いずれは防水層も劣化が進み、雨水を受け止めきれなくなってしまい、その雨水が屋内まで達してしまうのが雨漏りなのです。
まずは、雨水に対して一次防水の役割を果たしている外壁・屋根の塗膜を常に適正な状態に保つこと。
これが雨漏りに対しての対策としては第一歩になるのです。
雨漏りが二次被害を引き起こしてしまう
雨漏りが発生すると、大切な家財道具などを濡らしてしまったり生活に不便が出てくるだけでなく、住宅内部に溜まってしまった湿気がカビを発生させます。
カビはアレルギーや喘息を引き起こす原因となる恐れがあるので、家族の生活だけでなく身体にまで悪影響を及ぼします。
また、木造住宅でカビが発生する程の雨漏りが発生している場合、建物躯体の梁や柱に腐食が起こっている可能性が高く、梁や柱の腐食はシロアリを呼び込む結果に繋がりかねません。
水分を含んで腐食した木はシロアリの好物であり、一度そこに巣を作られてしまうとシロアリ駆除だけでも多額の費用がかかってしまいます。
さらに、シロアリ被害が進行すれば、建物自体の倒壊という一大事にもなりかねません。
雨漏りだけでも生活に悪影響を及ぼす甚大な被害ですが、雨水はさらなる被害をもたらす呼び水となってしまうのです。
建物全体の修繕費用が莫大なものになってしまう
ヘアークラック程度であれば、慣れた人であればホームセンターで1,000円程度でコーキングを購入しDIYすることで塞ぐこともできるでしょう。
しかし長年外壁の劣化を放置した結果、外壁塗装や屋根修理、さらには雨漏り修理やシロアリ駆除など多数の修繕工事が必要になってしまうと、建物全体の修繕費用は莫大なものになるでしょう。
早めに対処していれば数千円〜数万円で済んでいたところを、放置してしまったがために数倍〜数十倍に修繕費用が跳ね上がってしまうケースもあるのです。
以下の表は、雨漏りが発生した際の修理費用の料金例です。
雨漏りの原因箇所ごとの修理費用相場
- 雨漏りの原因箇所
- 費用相場
- 屋根からの雨漏り
- 軽度なら約5~50万円、重度なら〜200万円
- 天井からの雨漏り
- 約5~15万円
- ベランダからの雨漏り
- 約5~30万円
- 外壁からの雨漏り
- 軽度なら約5~50万円、重度なら〜200万円
- 窓枠・サッシからの雨漏り
- 約5~30万円
雨漏りの部位ごとの修理費用相場
- 雨漏りの部位
- 費用相場
- 雨漏り修理
- 軽度なら約5~50万円
- 棟板金修理
- 約5~15万円
- 棟板金の部分交換
- 約5,000円 / ㎡
- 雨樋修理
- 約5~15万円
- 屋根材張替え
- 5,000円〜5万円 / ㎡
- 屋根重ね葺き(カバー工法)
- 約80〜150万円
- 屋根葺き替え
- 約100〜200万円
- サイディング張替え
- 約40〜50万円 / 1面
- バルコニー防水
- 約10〜20万円
- コーキング打ち替え
- 約1,000〜2,000円
外壁・屋根の劣化を早めに対処すれば、修繕費用を大きく抑えることができるのがおわかりいただけるかと思います。
建物の寿命を著しく縮める
雨漏り被害やシロアリ被害は修繕することができますが、建物躯体へのダメージは残ります。
例えば建物躯体の梁や柱の腐食、またはシロアリ被害は程度によっては部分的な修繕で直りますが、最悪の場合建物の寿命を著しく縮める恐れがあります。
建て替えが必要になるといったケースも無い訳ではありません。
高額修理になる前に修理すべき外壁・屋根の劣化症状 まとめ
ここまで、高額修理になる前に修理すべき外壁・屋根の劣化症状をご紹介してきました。
いずれの場合でも外壁の耐久性や防水性に関わる症状ばかりで、放置すると雨漏りへと繋がり、さらに放置すれば建物躯体へ深刻なダメージを与えかねない事態になってしまいます。
ここで大切なのは、劣化に気づいた際に誤った対処をしないように、ご自分でDIYしようとせず専門業者に任せることです。
例えばコーキング工事などはDIYでもできそうに思われがちですが、下手に隙間なくコーキングを埋めてしまうと雨水の流れが変わり、別の箇所に水が溜まって更なる雨漏りを引き起こす恐れもあります。
また、クラック補修についても、コーキングで埋めれば終わりのように感じますが、まずは診断を行いヒビの深さがどれくらいか?外壁・屋根内部への被害はどの程度か?を調べる必要があります。
原因や状態を見極めない状態での安易な工事は、より深刻な被害をもたらすことがあるので注意しましょう。
建物診断や現地調査であれば無料で行っている業者も数多くいます。
劣化に気づいた際は専門家の診断を仰ぎ、大きなトラブルが発生する前に早め早めの対処を心がけましょう。