【症状別】屋根の劣化サインと緊急度|まずはセルフチェック!
屋根修理を検討する最初のステップは、ご自宅の屋根がどのような状態にあるかを知ることです。
専門家でなくても確認できる劣化のサインは数多くあります。
まずはご自身で可能な範囲でチェックしてみましょう。
※高所での確認は大変危険です。地上やベランダから見える範囲の確認に留め、決して屋根には登らないでください。
緊急度【高】:早急な専門家による点検が必要な症状
以下の症状が見られる場合、すでに雨漏りが発生していたり、下地が深刻なダメージを受けていたりする可能性があります。
放置すると被害が拡大するため、すぐに専門業者に相談してください。
・雨漏りが発生している(天井や壁にシミがある、ポタポタと水が落ちてくる)
・屋根材の明らかな破損(瓦が割れている、スレートが欠けている、屋根材が地面に落ちている)
・棟板金(屋根のてっぺんの金属部分)の浮きや剥がれ(強風で釘が緩み、浮き上がっている。放置すると飛散する危険性も)
緊急度【中】:修理・メンテナンスの検討を始めるべき症状
今すぐ深刻な問題に繋がるわけではありませんが、劣化が進行しているサインです。
次回のメンテナンス計画を具体的に立て始める時期と言えるでしょう。
・屋根全体の色あせ・変色(塗膜の防水機能が低下しているサイン)
・コケ、カビ、藻の発生(屋根の防水性が切れ、常に湿った状態になっている可能性)
・スレートのひび割れ(軽微なひび割れでも、放置すると水分が浸透し、冬場の凍結で割れが広がる「凍害」の原因に)
・金属屋根のサビ(塗膜が剥がれ、金属が直接外気に触れている状態。放置すると穴があくことも)
・漆喰(瓦の隙間を埋める白い部分)の剥がれ(瓦の固定力が弱まり、ズレや雨漏りの原因に)
緊急度【低】:定期的な観察が必要な症状
現時点ですぐに修理が必要なわけではありませんが、新築から10年前後で現れる初期の劣化サインです。
屋根の汚れ、砂やホコリの蓄積
塗膜のツヤがなくなってきた
これらのサインを見つけたら、スマートフォンのカメラで写真を撮っておくことをお勧めします。
定期的に撮影して見比べることで、劣化の進行度合いを客観的に把握できます。
【工事内容別】屋根修理の費用相場
屋根修理の費用は、劣化の範囲や症状によって「部分的な補修」で済む場合と、「全体的なメンテナンス」が必要な場合に分かれます。
部分的な補修の費用相場
比較的小規模な工事で、費用も抑えやすいのが特徴です。
雨漏り修理:5万円~50万円(1日~7日)
瓦の差し替え・ズレ補修:1万円~5万円(1日~2日)
棟板金の交換:10万円~30万円(1日~3日)
漆喰の詰め直し:5万円~25万円(2日~4日)
雨樋の修理・交換:3万円~40万円(1日~3日)
原因箇所の特定と補修を行う雨漏り修理は、コーキングの打ち直しなど簡単な作業なら5万円程度で済みますが、原因が複雑な場合は調査費用が別途かかることもあります。
また、割れたりズレたりした瓦を部分的に交換・修正したり、強風で被害を受けやすい屋根の頂上部分の棟板金を交換したりする工事は、火災保険が適用されやすい工事の一つです。
瓦屋根の場合は、古い漆喰を剥がし、新しい漆喰を詰める漆喰の詰め直しが定期メンテナンスとして重要になります。
全体的なメンテナンスの費用相場
屋根全体の劣化が進行している場合や、築10年以上が経過している場合は、大規模なメンテナンスが必要になります。
これらの工事では、多くの場合「足場の設置」が必須となり、その費用(約15万~25万円)が別途かかります。
屋根塗装(約40万~80万円)
屋根塗装は、屋根材の表面に新しい塗料を塗る工事で、塗膜によって屋根材の防水性を回復させ、紫外線や雨風から保護するのが主な目的です。
屋根材自体に大きなダメージがない場合に有効なメンテナンス方法といえます。
この工法のメリットは、費用が比較的安く、工期が短い点です。
一方で、屋根材自体の寿命を延ばすものではなく、下地の劣化は改善できないというデメリットがあります。
推奨される時期は、新築から10年~15年です。
カバー工法(重ね葺き)(約80万~150万円)
カバー工法は、既存の屋根材の上に、新しい軽量な屋根材を被せる工法です。
古い屋根材の撤去費用や処分費用がかからないため、葺き替えよりもコストを抑えられるのが大きな特徴です。
葺き替えよりも費用を抑えられ、工期も短く、断熱性や遮音性が向上するというメリットがあります。
しかし、屋根全体の重量が増すため、建物の耐震性への配慮が必要になる点や、屋根の下地の状態は直接確認できない点がデメリットとして挙げられます。
また、瓦屋根には基本的に施工できません。
推奨される時期は築20年~30年で、特にスレートや金属屋根のメンテナンスではこのカバー工法が主流となっています。
屋根葺き替え(約100万~250万円)
屋根葺き替えは、既存の屋根材をすべて撤去し、新しい屋根材に交換する最も大規模な工事です。
屋根材だけでなく、その下の防水シート(ルーフィング)や野地板(下地)も新しくするため、屋根の寿命をリセットできるのが最大のメリットです。
屋根の寿命がリセットされ、下地の状態を確認・補修できるほか、軽い屋根材に変更することで家の耐震性を向上させることも可能です。
ただし、費用が最も高額になり、工期も長くなるというデメリットがあります。
推奨される時期は築30年以上で、雨漏りが深刻な場合や、下地の劣化が疑われる場合に選択されることが多い工法です。
屋根葺き直し(約100万~180万円)
屋根葺き直しは、日本瓦など、屋根材自体が再利用可能な場合に用いられる特殊な工法です。
一度瓦をすべて剥がし、防水シートや下地をメンテナンス・交換した後、同じ瓦を再び葺き直します。
この工法のメリットは、瓦を再利用するため、葺き替えに比べて廃材処分費などを抑えられ、費用を安くできる点です。
また、既存の瓦を使うため、家の外観・景観を維持できるのもメリットです。
一方で、瓦以外の屋根材では施工できず、瓦自体の状態が悪いと再利用できないという制約があります。
推奨される時期は築20年~30年、瓦屋根で下地のメンテナンスが必要な場合に適しています。
【屋根材別】特徴とメンテナンス費用
使用されている屋根材によって、耐用年数や適切なメンテナンス方法、費用が大きく異なります。
ここでは代表的な5つの屋根材について解説します。
・スレート
スレートは、安価で普及率が高く、デザインが豊富なのが特徴ですが、一方で割れやすいというデメリットがあります。
耐用年数は20年~25年です。
メンテナンスは10年前後で40万円~60万円程度の屋根塗装、20年以降になると80万円~120万円程度のカバー工法、または100万円~150万円程度の葺き替えが主な選択肢となります。
・ガルバリウム鋼板
ガルバリウム鋼板は、軽量で耐震性が高く、サビにくく耐久性も高い人気の屋根材です。
耐用年数は25年~40年と長めです。
メンテナンス周期は15年前後で50万円~70万円程度の塗装、30年以降になるとカバー工法または葺き替えが必要となり、その費用は100万円~180万円程度が相場です。
・日本瓦(陶器瓦)
日本瓦(陶器瓦)は塗装が不要で、耐用年数は50年以上と非常に耐久性が高いのが最大のメリットですが、重量があるため耐震性には注意が必要です。
瓦自体のメンテナンスは不要ですが、20年~30年周期で、瓦の隙間を埋める漆喰の補修(5万円~25万円)や、下地をメンテナンスするための葺き直し(100万円~180万円)が必要になります。
・セメント瓦
セメント瓦は、デザインが豊富ですが、素材自体に防水性がないため塗装が必須です。
耐用年数は30年~40年です。
10年前後で40万円~70万円程度の塗装を行い、30年以降は120万円~200万円程度の葺き替えが一般的なメンテナンスサイクルです。
・アスファルトシングル
アスファルトシングルは、柔軟で複雑な形状の屋根にも対応できるシート状の屋根材で、アメリカでは主流です。
耐用年数は20年~30年です。
15年前後で部分的な補修を行い、25年を過ぎると90万円~160万円程度のカバー工法、または葺き替えを検討する時期になります。
30年先を見据えた屋根修理のメンテナンススケジュール
屋根にかかるトータルコストを抑えるためには、場当たり的な修理ではなく、長期的な視点でのメンテナンス計画が不可欠です。
ここでは、一般的なスレート屋根(耐用年数30年と仮定)のモデルケースを見てみましょう。
新築から10年経過したら、屋根材の劣化はまだ軽微なため、防水性を担う塗膜を再形成し、屋根材本体を保護する「予防メンテナンス」として40万円~60万円程度の屋根塗装を行います。
次の10年、つまり築10年~20年の間には、屋根材の劣化が少しずつ進行します。
状態が良ければ60万円~80万円程度で2回目の塗装を行いますが、ひび割れや欠けが多い場合は、この段階で80万円~120万円程度のカバー工法を選択するのも一つの手です。
そして築20年~30年以降になると、屋根材本体の寿命が近づき、塗装では対応できないケースが増えてきます。
下地の劣化も考慮すると、屋根全体を刷新するカバー工法(80万円~120万円)や屋根葺き替え(100万円~150万円)が主な選択肢となります。
仮に寿命が30年だと想定した場合、屋根にかけるトータルコストは安くてもおよそ150万円程度、高い場合は300万円を超えるケースもあります。
だからこそ、将来を見越して屋根にかけるトータルコストを事前に計算し、計画的に資金を準備しておくことが大切です。
屋根修理の費用を賢く抑える5つのコツ
高額になりがちな屋根修理ですが、ポイントを押さえることで修理費用を賢く抑えることが可能です。
複数の屋根修理業者から相見積もりを必ず取る
最も重要かつ効果的な方法です。
複数の屋根修理業者から見積もりを取ることで、ご自宅の屋根修理の適正な価格相場を把握できます。
また、価格だけでなく、提案内容や担当者の対応を比較検討することで、信頼できる業者を見つけやすくなります。
最低でも3社から見積もりを取るのがお勧めです。
火災保険を活用する
台風、強風、大雪、雹(ひょう)などの自然災害によって屋根が破損した場合、火災保険が適用される可能性があります。
「火災」という名前ですが、多くの保険は風災・雪災・雹災なども補償対象としています。
「もしかしたら?」と思ったら、まずは保険会社に連絡し、保険申請に詳しい修理業者に相談してみましょう。
※経年劣化による破損は対象外です。
自治体の助成金・補助金を調べる
お住まいの自治体によっては、省エネリフォーム(遮熱塗装など)や耐震改修工事に対して助成金や補助金制度を設けている場合があります。
「(お住まいの市区町村名) 屋根リフォーム 助成金」などで検索し、活用できる制度がないか確認してみましょう。
外壁塗装とセットで工事する
屋根修理と外壁塗装は、どちらも「足場の設置」が必要です。
この足場代は一度の工事で15万~25万円ほどかかります。
屋根と外壁のメンテナンスを別々に行うと、その都度足場代がかかってしまいますが、同時に行えば足場代は1回分で済み、トータルコストを大幅に削減できます。
閑散期を狙う
塗装工事は天候が安定している春や秋に依頼が集中します。
逆に、梅雨時期や夏・冬は比較的依頼が少ない閑散期にあたります。
業者によっては、この時期に契約すると割引をしてくれる場合があるため、交渉してみる価値はあるでしょう。
信頼できる優良な屋根修理業者の見分け方
残念ながら、屋根修理業界には手抜き工事や高額請求を行う悪徳業者が存在するのも事実です。
大切な住まいを任せる業者選びは慎重に行いましょう。
優良屋根修理業者のチェックポイント
信頼できる屋根修理業者かを見極めるには、いくつかのポイントがあります。
まず、見積書の内容が詳細かどうかです。
「工事一式」のような大雑把な記載ではなく、「足場設置」「高圧洗浄」「下地処理」「塗料名(メーカー、製品名)」「使用缶数」など、項目ごとに単価と数量が明記されているか確認しましょう。
次に、こちらの質問や不安に丁寧に答えてくれるかも重要です。
専門用語ばかりを使わず、素人にも分かりやすく工事内容を説明してくれる誠実な業者を選びましょう。
また、会社のウェブサイトなどで、ご自宅と似たような条件の施工実績が豊富かどうかも確認してください。
さらに、「工事保証書」の発行や定期点検など、保証やアフターフォローが充実しているかも大切なポイントです。
最後に、建設業許可(500万円以上の工事に必須)や、建築板金技能士、塗装技能士といった国家資格を持つ職人が在籍しているかは、技術力の高さを示す一つの指標になります。
要注意!悪徳屋根修理業者のよくある手口
一方で、注意すべき悪徳屋根修理業者の手口も知っておきましょう。
突然訪問してきて「近所で工事をしている者ですが、お宅の屋根が剥がれているのが見えました。無料で点検しますよ」などと不安を煽り、不要な工事を契約させようとするのは典型的な手口です。
また、「今日契約してくれるなら半額にします!」といった大幅な値引きで契約を急がせたり、「このままでは大変なことになる」と過度に不安を煽って冷静に考える時間を与えなかったりする業者にも注意が必要です。
その場で契約せず、必ず複数の業者から話を聞いて比較検討することが、悪徳業者から身を守る最善の策です。
まとめ:計画的なメンテナンスで大切な住まいを長く守ろう
屋根は、私たちの暮らしを厳しい自然環境から守ってくれる非常に重要な部分です。
しかし、その重要性にもかかわらず普段あまり意識することがないため、劣化が進んで雨漏りなどの症状が出てから、慌てて修理を検討するケースが少なくありません。
そうなると、本来は塗装や部分修理で済んだはずのものが、葺き替えなどの大規模な工事が必要になり、結果的に多額の出費に繋がってしまいます。
この記事で解説したように、屋根修理には様々な種類があり、それぞれに適切な時期と費用が存在します。
10年に一度は専門家による点検を受け、屋根の状態を把握すること。
そして、色あせやコケといった劣化の初期段階で、予防的なメンテナンス(塗装など)を行うこと。
さらに、築20年を過ぎたら、カバー工法や葺き替えも視野に入れた本格的なリフォームを計画すること。
こうした長期的な視点を持ち、計画的にメンテナンスを行うことが、屋根の寿命を最大限に延ばし、トータルコストを抑える最も賢い方法です。
まずはご自宅の屋根をチェックすることから始め、この記事を参考に、30年先まで見据えた安心のメンテナンス計画を立ててみてはいかがでしょうか。