台風によって住宅が受ける被害にはどんなものがある?
台風が接近・上陸すると、短時間に月間降水量に迫る雨を降らせるだけでなく、強烈な風を伴います。
そのため、台風によって住まいが受ける被害は、強風による被害と大雨による被害の2種類に分けることができます。
では、強風と大雨、それぞれの事例において実際に住まいがどんな被害を受けるのかを見ていきましょう。
強風によって住宅が受ける被害
強風によって発生する被害として、特に多いのが屋根材の飛散です。
屋根材や棟板金が経年によって劣化している場合、屋根材が形状変化を起こして反ったり伸縮している、または屋根材を固定している釘が錆びたり緩んだりしている恐れがあります。
そうなると、屋根材の隙間に強風が入り込み、屋根材をめくり上げて飛散させてしまいます。
さらに、一部が飛散してしまうとその周囲の屋根材も強風の影響を受けやすくなり、さらに飛散が拡大するのです。
屋根材だけでなく雨樋も飛散被害を受けやすい箇所ですので覚えておきましょう。
このような飛散被害によって起こる二次被害が、飛来物による破損被害です。
強風によって飛ばされた屋根材が近隣住宅の外壁や窓、あるいは車に傷をつけたという事例は非常に多いです。
ただし、被害を引き起こす要因は屋根材に限ったものではなく、ベランダに置いてある鉢植えや物干し竿、また住宅の横に置いてある自転車、さらには近隣店舗の看板など様々なケースが想定されます。
飛散被害との大きな違いは他者に怪我をさせる、また他の住宅に損害を及ぼす恐れがあるという点でしょう。
そのため、自宅への備えと同時に、飛ばされそうなものは屋内へ入れておく、固定している釘やネジが緩んでいないかチェックするなど、充分に配慮する必要があります。
大雨によって住宅が受ける被害
大雨によって発生する被害として多いのは雨漏りです。
屋根は屋根材、防水シートの二段構えで雨水が屋内に侵入するのを防いでくれています。
そのため、屋根に多少の劣化があったとしても、通常の雨程度では雨漏りが発生しないよう作られています。
しかし、台風や線状降水帯は短時間に大量の雨をもたらすため、屋根材・防水シートが受け止めきれる容量を超えてしまい、溢れ出た雨水が雨漏りを引き起こすのです。
一度でも雨漏りが発生したら自然に直ることは決してなく、その後は雨漏りが再発しやすくなる場合もあります。
また、雨漏りは屋根から起こるものと思われがちですが、台風など強風を伴う大雨の場合は外壁からも雨漏りが発生します。
外壁からの雨漏りについては、こちらの記事で詳しく解説していますのでぜひご覧ください。
また、雨漏りを引き起こす原因となり得る建物箇所の劣化症状については、こちらの記事で詳しく解説しています。
さらに、ベランダ・バルコニーの排水口が詰まっている状態で大量の雨が流れ込むと、排水能力を超えた水が溢れて屋内に浸水するケースもあります。
屋根はご自身ではなかなかチェックしにくい箇所ですが、ベランダ・バルコニーの排水口はチェックしやすい箇所なので、台風前には事前に詰まりが起こっていないか確認しておきましょう。
次に起こり得る被害が、浸水被害です。
2019年の台風19号では、全国各地で計60,000棟もの建物が浸水被害を受けています。
床下・床上いずれの浸水被害であっても、修繕には大掛かりな工事が必要となるでしょう。
しかしそれ以前に、浸水が起こっているということは、河川の氾濫や下水の処理能力オーバーによる水害が起こっているということであり、命の危険があるということです。
特に、河川や用水路の近くにお住まいの方は、警報や注意報などの情報収集を欠かさないようにしましょう。
また、山間部に住まわれている方が忘れてはならないのが土砂災害です。
土砂災害は毎年必ずといって良いほど各地で発生している災害ですし、当然ながら命の危険があります。
土砂崩れの前兆とされている「雨が止んでいないのに川の水位が下がる」「山鳴り・地鳴り」といった前兆を感じたら、何より身の安全を確保して避難するようにしましょう。
台風の強さによって変わる被害
台風が接近するにつれて、風は強さを増します。
天気予報やニュースなどでも「風速〇〇mの暴風が〜」といった言葉をよく耳にしますが、ただ数字だけを聞いても具体的にどれくらい強い風なのかは想像しにくいのではないでしょうか?
それでは具体的に、風速がどの程度でどのような被害が発生するのか詳しく見ていきましょう。
風速15m〜20m/s
風速が15m/sが超えると、人は風に向かって歩くことができなくなると言われており、立っていられず転倒する人も出てきます。
自分の意思でその場に立っていられなくなるので、高所での作業などは絶対に控えるようにしましょう。
また、屋外では電線が強風に煽られることで大きく揺れて鳴り始めます。
さらに、取り付けが甘い、固定しているネジが錆などによって緩んでいる看板やトタンは外れ始めます。
基本的に、風速10m〜15m/sを越える強風が吹いている中での屋外活動は危険です。
風速が10mを越える前に用事はすべて済ませた上で不要な外出を控え、台風対策もそれまでに済ませておきましょう。
風速20m〜25m/s
風速が20m/sが超えてくると、人は何かに掴まらないと立つことが困難となります。
また、外れてしまった看板やトタンなどが大きく飛ばされるため、飛来物によって負傷するリスクが一気に高まります。
屋外は、細い木であれば折れることもある程の強風となっています。
飛来物によって住まいの窓ガラスが割れるといった二次被害も発生しやすくなるので、雨戸を閉めるなどして対策しましょう。
風速25m〜30m/s
風速が25m/sが超えると、屋外での行動は極めて危険となります。
屋外では多くの樹木が幹から薙ぎ倒され、電柱や街灯といった重量のあるコンクリート製、鉄製のものでも倒れる場合があります。
「ブロック壁が倒れてきて怪我を〜」といったニュースを見かけることがありますが、多くの場合この風速で起こる被害です。
引用: 宮古島地方気象台 台風への備え
台風から家を守るために覚えておきたい5つの対策・備え
ここまで、台風によってどんな被害が発生するのか、そして風の強さごとの被害の違いなどを解説してきました。
台風による大雨・強風は自然災害のため、いつ発生するのかを予測するのは困難ですし、台風の通過を避けることもできません。
しかし、大雨・強風に対して、ご自身の身を守るという意味でも事前の対策をすることは可能です。
ここでは、台風から大切な家を守るために、そして何よりご自身を守るために覚えておいていただきたい対策・備えを5つの項目に分けて解説します。
家の外に対する備え
まず、窓やガレージに雨戸・シャッターがある場合は閉めておき、台風が通過するまで不要な開け閉めを避けるようにしましょう。
もし窓に雨戸がない場合、ガラスの飛散防止フィルムを貼るだけでも飛来物に対する有効な対策となります。
また、強風によって屋根材が飛ばされると、住まいに雨漏りなどの被害が発生するだけでなく、近隣住宅や通行人に対する大きな事故を引き起こす可能性もあります。
ご自身での対応は難しい部分もありますが、釘やネジが外れている箇所はないか確認し、もし該当する箇所があれば補強や撤去を行いましょう。
加えて、庭やベランダに置いてある植木鉢や自転車は、強風で飛ばされて自宅や近隣住宅に被害を及ぼす可能性があります。
転倒や紛失から守るためにも、風で飛ばされたり転倒させられそうなものは固定したり屋内へ片付けておきましょう。
あと、忘れてはならないのが、ベランダの排水溝や雨樋などの排水設備の点検・掃除です。
排水設備がゴミや落ち葉などで詰まっていると、排水処理しきれなかった水が溢れ出し、雨漏りを引き起こす要因にもなりかねません。
排水溝や雨樋は事前に掃除して、水はけを良くしておくようにしてください。
もし、河川や用水路などの氾濫による床下・床上浸水が起こる可能性がある地域にお住まいの方は、ホームセンターなどで土嚢や水嚢を購入し、できる限り水が敷地内、建物内に入らないようにして住まいを守りましょう。
土嚢や水嚢の設置は屋外作業となるため、雨風が強くなってからの作業は危険を伴うので、台風が近づく前に作業を終わらせておきましょう。
土嚢が無い場合は、ゴミ袋に水を入れて水嚢を作ってブロック等で固定する、水を入れたペットボトルを段ボールに詰めて簡易堤防にするといった代替方法もあるので覚えておきましょう。
家の中に対する備え
前項のように家の外を守る備えができたら、続いては家の中に対する備えです。
まず、懐中電灯、電池式の携帯ラジオ、非常用食品、水など非常用具が揃っているかを確認しましょう。
これらの非常用具は、普段から袋にまとめておき非常用持ち出し袋として準備しておくと、台風だけでなく他のどんな災害時にも必ず役に立ちます。
近年では、懐中電灯やラジオの代わりにスマホを使う人の方が多いかもしれません。
そういった方は、台風が接近してくるといつ停電になるかわかりませんので、常に充電をしておき途中で使えなくなるという事態を防ぎましょう。
次に、貴重品、衣類、家財道具を2階以上の高い場所に移動しておくことが大切です。
家財道具が大切で高価なものであるほど、浸水被害に遭った場合は被害も大きくなります。
浸水すると困ることは上階へ移動し、その上でできれば浸水被害に対応してくれる損害保険に加入しておくとより安心です。
事前に地域の避難場所を確認しておく
住まいの内外の備えが終われば、不要な外出を控え台風が通過するのを待ちましょう。
この時忘れてはならないのが、地域の避難場所の事前確認です。
学校や役所、公民館など、お住まいの地域のどこが避難場所として指定されているか、そしてその場所への避難経路はどこなのかを確認しておきましょう。
これらの情報はご家族とも共有し、万が一の連絡方法はどうするかも日頃から話し合っておきましょう。
「警報・注意報」など台風に関する最新情報を入手する
台風が上陸・接近している際、テレビを観ているとひっきりなしに気象情報が更新され、立て続けに速報が入るのを見たことがあるという方も多いでしょう。
気象台からは常に「台風情報」や「警報・注意報」が発表されています。
ご自身の身にどのような危険が迫っているかをいち早く知るために、テレビやインターネットから最新情報を入手するよう心がけてください。
もし、避難準備情報・避難勧告が出た場合は、しっかり戸締りを行なった上で、近隣住民にも声をかけ徒歩で避難しましょう。
とにかく不要な外出を控える
ここまで、様々な台風への備え・対策について解説しましたが、「不要な外出を控える」これが一番基本にして最も重要な台風への備え・対策となります。
事実、非常に残念なニュースではありますが、「台風による被害を心配して外に様子を見に行った方が、そのまま氾濫した川に流されて〜」といった事故は台風が上陸する度に毎回耳にします。
日頃通り慣れている道でも、大雨で視界が遮られたり、小川や側溝が氾濫していると道路との境界が見えにくくなるため、転倒事故が発生しやすくなります。
決して過信せず、大丈夫と思っている場所でも不用意に近づかないでください。
不要な外出はもちろん、とにかく可能な限り外出を控え、台風が過ぎ去るのを待ちましょう。
台風被害には火災保険が使える!
台風への備えとして、火災保険に加入しておくのは非常に有効な手段です。
火災保険は、名前の通り火災による被害にしか保険が適用されないと思われている方も多くいらっしゃいますが、風災・雪害・落雷・雹(ひょう)災といった災害にも適用されます。
補償の対象となる具体的な被災事例は次のようなものが挙げられます。
・台風によって屋根材が破損し雨漏りが発生した
・台風によってスレートなど軽量な屋根材が破損し飛散した、サイディングが欠落した
・積もった雪の重みで屋根材や雨樋、カーポートの屋根などが破損した
・雷が落ちて屋根材が破損したり、屋根に穴が開いたりした
・大雨によって浸水してしまい、外壁が腐食・破損してしまった(水災対応の保険加入の場合)
上述の火災・風災・雪害・落雷・雹(ひょう)災などは、数ある火災保険のほとんどがカバーしていますが、水害などは補償の対象外になっている保険もあるので、申請前にご自身の保険の内容を確認するようにしましょう。
水害は台風や大雨による洪水や高潮による被害を指しますが、台風やゲリラ豪雨が多発しやすい近年においては、被害に遭う可能性が一昔前より上がっています。
しかし、水害が付帯している火災保険に加入されている人は、保険加入者全体の2割弱という統計もあります。
住まわれている地域によっては、保険内容の見直しを検討されても良いかもしれません。
火災保険についてはこちらの記事で詳しく解説していますので、併せてぜひご覧ください。
火災保険に加入されていない方は、一度加入を検討してみるのも良いでしょう。
保険は、普段から見慣れていない人にとっては証書の文面を読むだけではしっかり内容を把握するのが難しいものです。
加入や見直しをする際には、保険会社の担当に直接相談するなど、専門家にアドバイスをもらいながら検討するのがおすすめです。