外壁塗装業者に関する重要な国家資格と許可
屋根・外壁塗装に関係する資格には様々なものがありますが、こちらでは代表的なものをご紹介します。
塗装に関しては多くの資格・許可が存在しますが、下記の塗装工事業許可と、一級塗装技能士は長い実務経験が必要とされるため、特に塗装に関する資格では重要となります。
建設業許可(塗装工事業)
建設業法第3条によって、工事費用が500万円以上の工事を行う建設業を営む場合には、建設業許可を受けることが義務付けられています
営業所を設ける場合には都道府県の知事の許可が、複数の都道府県に営業所を設ける場合は国土交通大臣による許可が必要になります。
戸建ての塗装の場合には工事金額が500万円を超えることはまずないため、建設業の許可は必要ありません。
しかし建設業の許可は国が定める様々な条件をクリアしている必要があるので、取得しているかどうかは信頼できる塗装業者か見極める目安になります。
塗装工事業の建設業許可の取得の要件は主に下記の5つになります。
1.経営業務の管理責任者
→建設業を営む常勤の役員や事業主本人が塗装工事業の経営者として5年以上の経験、もしくは塗装工事業以外の建設業の経営者として7年以上の経験
2.誠実性
→過去に建築士法・宅地建物取引業法等で「不正な行為」または「不誠実な行為」を行っていない
3.欠格要件
→過去五年間不正が原因で建設業許可を取り消されることなく継続して経営している
4.専任技術者
→役員や従業員の中に塗装工事業に関する資格を保持している、または塗装工事の実務経験が10年以上あるなど
5.財産要件
→500万以上の自己資本があるなど
建設業許可はこれらの基準を満たす必要があるため、これらの条件をクリアした業者は技術だけでなく経営面においても信頼度が高いと言えるでしょう。
塗装技能士
塗装技能士は国家資格である技能検定制度の一種で、都道府県職業能力開発協会によって実施されています。
塗装技能士の試験は3級、2級、1級に分かれています。
さらに技能検定は塗装の対象物によって、「木工」「建築業」「金属」「噴霧」「鋼橋」の5つに分かれます。
3級は未経験でも受験可能ですが、2級は2年以上、1級は7年以上の実務経験が受験資格として必要になります。
試験形式は学科と実技があり、外壁塗装に相当する「建築塗装作業」の実技では、指定された道具でラワン合板にパテ塗り、ケガキ、調色、ハケやスプレーによる塗装等を行って仕上がりを判定します。
試験時間は約5時間で、時間内に片付けまで終了させる必要があります。
学科試験では「塗装一般」「材料」「色彩」「関係法規」「安全衛生」「建設塗装法」という塗装に関する幅広い知識が求められる問題が出題されます。
一級塗装技能士(建設塗装作業)の合格率は約50%で、簡単に取得できるものではなく、経験を積んだ職人さんでも約半数が落ちてしまう難易度が高めの試験となっています。
一級塗装技能士の資格を持っているということは、少なくとも7年以上の実務経験があり、塗装に関して幅広い知識を持っていることの裏付けになります。
外壁塗装に関して持っていると安心の資格と許可
ここからは、「建設業許可」と「塗装技能士」以外の、外壁塗装において業者が持っていると安心の資格と許可をご紹介します。
どれも外壁塗装を行うにあたって必須となる資格や許可ではありませんが、資格・許可を持っているということはそれだけ知識・経験が豊富である証明になるので、業者選びの参考になるでしょう。
有機溶剤作業主任者
有機溶剤作業主任者は、労働安全衛生法にて規定されている国家資格です。
有機溶剤とは様々なものを溶かす揮発性の有機化合物の総称で、色々な物質が含まれます。
この有機溶剤は身の回りの色々な場所で使われており生活に役立つものですが、人体に悪影響を及ぼす危険性もあるため取り扱いには注意が必要です。
有機溶剤作業主任者は、有機溶剤を使って作業する際に安全に行えるよう指揮や監督を行う責任者の資格です。
外壁塗装の油性塗料には有機溶剤が含まれています。
塗料には色の元となる顔料、シリコンやフッ素などの樹脂、樹脂を固める硬化剤、塗料を塗りやすくする添加物、そして顔料・樹脂・硬化剤・添加物を溶かすための溶剤が含まれています。
この溶剤が水性の場合は水性塗料、油性の場合は油性塗料になり、油性塗料の溶剤はトルエン、キシレン、エタノール等の有機溶剤です。
有機溶剤作業主任者を持っているということは、安全に対する意識が高いといえます。
足場の組立て等作業主任者
足場は外壁塗装や屋根塗装、屋根工事など住まいに関する工事を安全に行うために欠かせないものです。
足場の組立て等作業主任者は、高さ5m以上の場所に足場を組み立て・解体を行うため必要な国家資格です。
受験には3年以上の足場作業の実務経験が必要です。
多くの塗装業者は足場の組み立てを自社で行わず、足場の専門業者や協力業者に外注しています。
もしこの資格を持っていれば、自社で足場を組みたてが可能であるということになり、外壁塗装にかかる費用が安くなる傾向があります。
外壁診断士
一般社団法人全国住宅外壁診断士協会が実施している民間資格です。
3階建て以下の一般住宅を対象に、住宅外壁の診断と補修方法の判断ができる資格です。
「外壁診断士」と「外壁アドバイザー」の二種類があり、外壁診断士を受験するには、外壁アドバイザーの資格取得と住宅関連事業での実務経験が2年以上、もしくは塗装業など住宅建設に関わる経験が5年以上必要になります。
外壁劣化診断士
一般社団法人「一般社団法人 住宅保全推進協会」が実施する民間資格です。
建物の外壁の劣化状況を正確に診断し、適切なアドバイスが行える資格です。
受験資格は、建設業または不動産業での実務経験が3年以上、もしくは建築士または宅地建物取引主任者の資格を有している必要があります。
受験内容には、建物の構造や屋根・外壁の劣化状況、雨漏りのリスクの講習に診断の実務も含まれます。
外壁劣化診断士を有している業者は、外壁の劣化に関して適切に診断できると判断する目安になります。
防水施工技能士
防水施工技能士は塗装技能士と同じく国家資格である技能検定制度の一種です。
建物を雨水などから守る防水技術や知識を認定する資格です。
施工する場所や防水材によって9つの種類があります。
- ・アスファルト防水工事作業
- ・ウレタンゴム系塗膜防水工事作業
- ・アクリルゴム系塗膜防水工事作業
- ・合成ゴム系シート防水工事作業
- ・塩化ビニル系シート防水工事作業
- ・セメント系防水工事作業
- ・シーリング防水工事作業
- ・改質アスファルトシートトーチ工法防水工事作業
- ・改質アスファルトシート常温粘着工法防水工事作業
- ・FRP防水工事作業
それぞれに1級と2級があり、1級は実務経験7年以上、2級は実務経験2年以上が受験資格となっています。
筆記と実技があり、合格率は50%で難易度が高めの資格です。
塗装業者の場合は、ベランダの防水塗装などでウレタンゴム系塗膜防水工事作業を行うことが多いです。
こちらの資格を取得している場合は、適切に防水工事が行える経験と知識があるという判断の目安になります。
窯業サイディング塗替診断士
木造住宅塗装リフォーム協会が実施している民間資格です。
現在日本の住宅で最も普及している外壁素材である窯業サイディングのトラブルを防ぐために、窯業サイディングの塗装に関する知識を有することを証明する資格です。
受験資格には塗装・工事実務経験5年、または一級・二級塗装技能士などの資格を有することが求められます。
資格の取得には認定講習会の受講が必要で、3年ごとに講習を受けて更新する必要があります。
雨漏り診断士
雨漏り診断士は、NPO法人雨漏り診断士協会が実施する民間資格です。
雨漏りは原因の特定が難しく、何度修理しても雨漏りが再発するということがよくあり、雨漏り修理を的確に行うには専門的な知識と経験が必須となります。
雨漏り診断士協会は雨漏りの修理や調査を行う人材を育成し、雨漏りに関するトラブルを防ぐことを目的としています。
試験内容は、建物の基礎知識、雨仕舞いと防水・塗装の基礎知識、雨漏り診断の実例と、実務試験もあります。
また試験を行うだけではなく、定期的に講習会も開催しています。
塗装業者の資格を確認する方法と注意点
塗装業者が持っている資格は、ホームページやチラシで確認できます。
資格や免許を持っていればホームページやチラシでアピールをしていることがほとんどです。
また建設業の許可(塗装工事業許可)は、国土交通省「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」で確認することもできます。
もしも業者がホームページなどを持っていない場合には、担当者に直接聞いてみるのも一つの手段です。
注意が必要なのは、下請け業者が持っている資格をアピールする場合があるため、自社で職人を抱える自社施工の業者だとより安心です。
その場合、社内の職人や現場責任者、社長が持っているということになります。
資格や免許だけでは真の優良業者かどうかはわからない
資格や許可を持っていることは、知識や経験、そして意識の高さの裏付けになります。
特に、受験資格に長い経験が必要なものはそれだけ経験があるという証明にもなるでしょう。
ただ、資格や許可だけでは職人や外壁塗装業者の良し悪しを完全には見極められないというのも事実です。
本当にあなたの家のことを考えてくれる、信頼できる塗装業者を見極めるには、家の診断を適切に行ってくれるか、見積りの項目は詳細か、施工後の保証はどうなっているかなど、資格以外にもさまざまな要素を加味して判断する必要があります。
資格を持っているというだけで信頼せずに、複数社から相見積もりをとる、施工実績を確認するなど多面的に確認を行うことが業者選びにおいて重要になります。