そもそも外壁塗装・屋根修理に火災保険は使えるの?
皆さんは「火災保険を使って外壁塗装を無料でやりましょう!」「火災保険を利用すれば屋根修理が実質0円です!」という勧誘をされたこと、もしくはそういった広告を見たことはありませんか?
そもそも、「本当に無料で外壁塗装や屋根修理ができるの?」という疑問が浮かぶと思いますが、これ自体は事実です。
しかし、もっと正確に言うのであれば、「火災保険を使って外壁塗装・屋根修理ができる場合もある」が正解です。
外壁塗装・屋根修理に火災保険を使うには条件があり、それらを満たす場合にのみ保険会社から保険金がおりるようになっています。
そして一番大事なことは、最終的に火災保険が適用されるかどうかを決定するのはリフォーム業者ではなく保険会社という点です。
そのため、まだ現場を見てもいない内から「無料になります!」「確実におります!」とリフォーム業者は言えない、言ってはいけないのです。
ご自身が加入されている火災保険の項目をすべて把握している方はそんなに多くなく、業者に「絶対に大丈夫!」と言われると「プロが言うのなら…」と信じてしまう方もいらっしゃるでしょう。
皆さんに気をつけていただきたいのは、悪質な業者は現場を見る前から「無料でできる!」と費用面のみを強調し、契約を急かしてくるという点です。
具体的な事例をもとに説明します。
火災保険を利用した悪徳業者の手口について
外壁塗装・屋根修理で火災保険を使う場合、かんたんに説明すると、
業者が現地調査や点検で自然災害による被害であることを確認する
↓
施主様が保険会社に火災保険の利用を申請する
↓
業者が撮影した被害箇所の写真、作成した見積もりを保険会社に提出する
↓
保険会社の調査員(アジャスター)がやって来て、被害が発生した現場を確認する
↓
調査員の調査結果をもとに、保険会社が保険適用の可否を決定する
といった流れで進んできます。
繰り返しになりますが、火災保険が適用されるかどうかを決定するのはリフォーム業者ではなく保険会社です。
実際、「この被害状況なら保険金がおりるだろう」と思っていた申請が通らなかったりする事例も多くありますし、またその逆もあります。
お伝えしたいのは、業者が現地調査を行い「大丈夫だろう」と思っていた申請でも通らない事例がある中で、現場を見もしない内から「無料になります!」「確実におります!」と業者が言える理由など無いということです。
この場合、「無料」「絶対に」を強調してくる業者は、悪徳業者である可能性が非常に高いです。
悪徳業者は、契約を結ぶことだけを目的としており、とにかく足場設置・着工を急ぎます。
そして、契約さえ結んでしまえば後は保険金がおりなくても知らぬ存ぜぬ。
申請の結果保険金がおりず、皆さんが「無料でできるって言ってたから契約したのに!無料にならないなら契約を破棄したい!」と言っても、
「もう契約は結んでますし、足場も設置してるのでその分の費用だけでも払ってもらいます」
「もう着工してるので契約破棄はできません」
と、何かと理由をつけて費用を請求してくるのです。
火災保険を利用しての外壁塗装・屋根修理をご検討中の方は、申請が通ったことが確認できるまでは絶対に契約を結ばないようにしましょう。
そして、そもそも「無料」「絶対に」を強調してくる業者は悪徳業者の可能性が高いので、話を聞く必要もありません。
無事に申請が通ったとしても、そのような業者には手抜き工事をされてしまう恐れがあります。
火災保険の種類にはどんなものがある?
火災保険と一口に言っても、いくつか種類が存在します。
外壁塗装・屋根修理で火災保険を使う場合の条件について解説する前に、まずはどんなものがあるのかを見ていきましょう。
住宅火災保険
一般住宅向けの火災保険として、最もオーソドックスな保険であり、加入されている方も多くいらっしゃいます。
火災をはじめ、風災・雪害・落雷・雹(ひょう)災など幅広い自然災害が補償の対象となっています。
被害箇所の修繕だけでなく、外壁塗装・屋根修理にも利用が可能です。
住宅総合保険
上記の住宅火災保険の補償内容に、水漏れ・盗難・いたずら・不注意による破損・飛来物による破損・騒じょうなどが加えられた火災保険です。
ちなみに騒じょう(騒擾)とは、住宅前で暴動など暴力行為があり、それによって自宅の壁や堀などに破損・損壊の被害が発生することです。
住宅火災保険では、飛来物や騒じょうは「不可抗力」として保険の適用外になるため、住宅総合保険より幅広い被害に対応している保険になります。
オールリスクタイプ
上記の住宅総合保険の補償内容に、水廻りに関する不具合・カギの紛失などが加えられた火災保険です。
この保険の特徴は、
・工事規模に関わらず保険金が降りるタイプ
・住宅の様式に合わせて補償の範囲を自由に細かく選べるタイプ
と、お客様のニーズによって契約の内容が選べるという点です。
そのため、同じオールリスクタイプであっても、お客様によって内容が異なります。
特約火災保険
住宅を購入する際、住宅金融支援機構などから融資を受けた場合に加入する火災保険です。
住宅総合保険と同程度の補償を受けることができますが、平成28年4月以降は新規加入ができなくなっているため、今からでは加入ができない保険です。
店舗総合保険
店舗や事務所といった事業用建物の損害に対応している火災保険です。
建物への補償はもちろん、盗難・いたずら・暴行・不注意による破損による被害にも対応しています。
団地保険
補償の範囲は住宅総合保険と同程度になっていますが、「借家賠償責任保険」「個人賠償責任保険」といった一般住宅用の火災保険には無い補償項目が付帯しているケースが多いです。
ぜひご自宅がどのタイプの火災保険に加入しているのか確認してみてください。
日本は地震大国であり、近年自身が各地で多発していますが、地震に関して「住宅火災保険」「住宅総合保険」は任意で付帯させることが可能となっている保険が多いです。
また、「住宅火災保険」は数ある災害の中でも水害への補習が無いものも多いので注意しましょう。
保険会社や保険の種類によって若干の違いはありますが、基本的な申請方法や申請前後の流れは同じなので、そちらについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
外壁塗装・屋根修理で火災保険の申請ってどうやるの?方法や流れを徹底解説
外壁塗装・屋根修理に火災保険が適用される条件について
前項では、火災保険にどんな種類があるのかご紹介しましたが、本題である外壁塗装・屋根修理に火災保険が適用される条件について解説していきます。
外壁や屋根に生じた被害が災害によるもの
これが外壁塗装・屋根修理に火災保険が適用されるかどうかの大前提となります。
前項の火災保険の種類でご紹介したような、火災・風災・雪害・落雷・雹(ひょう)災といった災害によって被害が生じた場合にのみ保険が適用されます。
つまり、災害以外の原因による被害、例えば経年劣化による被害では保険の補償は受けることができないということです。
繰り返しになりますが、悪徳業者は経年劣化による被害であっても火災保険が使えるかのような口ぶりで勧誘してくるので注意しましょう。
上述の火災・風災・雪害・落雷・雹(ひょう)災などは、数ある火災保険のほとんどがカバーしていますが、水害やいたずら、騒じょうなどは補償の対象外になっている保険もあるので、申請前にご自身の保険の内容を確認するようにしましょう。
水害とは台風や大雨による洪水や高潮による被害を指しますが、台風やゲリラ豪雨が多発しやすい近年においては、被害に遭う可能性が一昔前より上がっています。
しかし、水害が付帯している火災保険に加入されている人は、保険加入者全体の2割弱という統計もあります。
住まわれている地域によっては、保険内容の見直しを検討されても良いかもしれません。
また、地震に関しては任意で付帯させるかさせないかを選ぶ保険が多いので、こちらも注意が必要です。
補償の対象となる具体的な被災事例は次のようなものが挙げられます。
・台風によって屋根材が破損し雨漏りが発生した
・台風によってスレートなど軽量な屋根材が破損し飛散した、サイディングが欠落した
・積もった雪の重みで屋根材や雨樋、カーポートの屋根などが破損した
・雷が落ちて屋根材が破損したり、屋根に穴が開いたりした
・大雨によって浸水してしまい、外壁が腐食・破損してしまった(水災対応の保険加入の場合)
被災から3年以内の申請
保険法第95条によって、「火災保険が利用できるのは、被害が発生してから3年以内の工事に対してのみ」と定められています。
そのため、例えば「雨漏りが発生したけど、たぶん4年前の台風が原因だから火災保険を使おうかな」と思っても利用することができません。
外壁や屋根に破損などの被害が発生してから3年も放置すれば、雨漏りをはじめ何かしらの被害が発生しやすくなってしまいます。
3年と聞くと長いようにも感じますが、雨漏りなどの実害が発生しないと意外と忘れがちになってしまうものです。
被害を発見したら早めに対処するように心がけましょう。
また、保険を使わず自費で修繕工事をしてしまった場合でも、3年以内の申請であれば保険金を申請することができるので併せて覚えておきましょう。
工事費用が免責金額を超えていること
火災保険には免責金額が設けられています。
免責金額とは、「工事費用が〇〇万円を超えない場合は自費で工事をしてください」と定めれられた金額です。
保険の証書やパンフレットなどには「自己負担額」と記載されている場合が多く、保険によって多少の違いはありますが、免責金額は20万円程度に設定されているものが多いです。
免責金額を下回る工事には火災保険は使えないので注意してください。
ただし、外壁塗装・屋根修理においてはコーキングの一部打ち直しや部分的な補修工事以外は、ほとんどの場合で足場が設置されます。
この足場費用は、平均15〜20万円ほど必要になります。
そのため、よほど軽微な工事でない限り、ほとんどの場合は免責金額を超えるのでそこまで気にしなくても良い項目かもしれません。
外壁塗装・屋根修理で火災保険を利用する際に覚えておきたい注意点
火災保険に加入しており、保険会社が定める条件を満たす場合は外壁塗装・屋根修理に火災保険を利用することができます。
しかしその場合でも、いくつか覚えておきたい注意点があるのでご紹介します。
申請は保険加入者自身で行う必要がある
火災保険は、「申請は契約者(加入者本人)が行うこと」と定められています。
申請には見積書や現場の写真も必要になるため、申請のサポートは業者でもすることが可能ですが、「火災保険の申請代行もしますよ!」と言ってくる業者には注意が必要です。
申請代行を申し出るような業者は、例えば本来100万円の工事であっても施主様に黙ったまま150万円で申請し、50万円分の保険金を騙し取ろうとする恐れがあります。
通常の外壁塗装・屋根修理でも業者選びは大切ですが、火災保険を利用した外壁塗装・屋根修理では尚更信頼できる業者選びが重要となります。
被害の状況がわかる写真が必要となる
火災保険の申請の際には、災害によって起こったどんな被害が起こったのかがわかる写真が必要となります。
意外と多いのが、「業者に依頼する前にご自身でコーキングなどで補修を行なってしまい、被害状況が正確にわからず保険がおりなかった」というケースです。
ご自身で補修工事を行う場合は、必ず修繕前の現場を撮影し、写真に残しておくようにしましょう。
保険金がおりるかどうかを決めるのは保険会社
火災保険は申請すれば必ず保険金がおりる訳ではありません。
申請を行った後は、保険会社の調査員が自宅にやってきて、被害の状況をその目で確認します。
そして、本当に被害は災害によるものか、被害の修繕に対して見積書の工事内容は適正かなどを事細かにチェックします。
そのため、経年劣化による修繕工事、必要な工事に見合わない高額な請求などは調査に引っかかり、申請が受理されることはありません。
写真ならわからないだろうと思って虚偽の申請を行っても、現地調査が行われるため必ずバレますし、そもそも虚偽の保険申請は詐欺罪に問われる恐れがあります。
ご自身でも申請内容に虚偽や不備がないかを確認する必要がありますが、こちらも信頼できる業者選びが重要となります。
申請した満額の保険金がおりるとは限らない
火災保険の申請が通ったとしても、必ずしも満額の保険金がおりるとは限りません。
例えば、「100万円の申請をしたのに、半額の50万円しかおりなかった」というケースも少なくありません。
こうなると、残りの工事代金は自費になってしまいます。
こういったトラブルを防ぐためにも、業者と契約を交わす前に火災保険の申請を行いましょう。
そして、保険金がおりることが確実になり、いくらおりるのかがわかった段階で契約を交わすようにしてください。
火災保険を利用する際の流れについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
外壁塗装・屋根修理で火災保険の申請ってどうやるの?方法や流れを徹底解説
火災保険を活用して、自費を抑えて外壁塗装・屋根修理を!
外壁塗装・屋根修理において火災保険を利用する最大のメリットは、やはり何よりも工事費用の負担を減らせるという点です。
災害は大切な住まいに多大な被害をもたらすことがありますが、決して安くない工事費用に躊躇される方が多いのも事実です。
しかし、被害を放置してしまえば更なる甚大な被害をもたらし、より高額な費用が必要になるだけでなく、建物自体の寿命も著しく縮めてしまいます。
また、火災保険に加入しているということは、当然毎月の保険料を支払っているということです。
自動車保険と違い、火災保険には保険を使っても等級が下がるといったペナルティはありません。
せっかく支払っている保険料を無駄にしないためにも、災害によって被害が発生した場合には、どんどん火災保険を活用しましょう。